センター通信
産業保健相談員レター 2022年11月 ~健康経営と 「人財になるための7つの条件」(産業医学一口メモ)~
2022.11.01
産業保健相談員 吉岡 嘉暁
私が嘱託産業医をしている企業では、特殊健診である有機溶剤健診を実施しており、検診結果が返って来たときには管理判定(就業措置等の判断)を産業医として行っています。特殊健診そのものには従事したことがなかったので、知識を深める為に企業の特殊健診に時々実際に従事して学習しています。ある職場の企業健診に行ったときに、「人財になるための7つの条件」 というポスターが事務所に貼って有りました。人材ではなく、人「財」でした。従業員みんなが成長して会社にとっての財産になろうということでしょう。読んでみると当たり前のことですが、改めてなるほどと思いました。
人財になるための7つの条件はどこの企業でもあてはまると思いました。
しかもこれは健康経営とも関係があるとも思いました。
なぜかというと、健康経営は従業員と経営層のコラボレーション(協働)がないと成功しないと私は考えているからです。今の不透明な時代の荒波を企業が適切に生き延びていく為には、このコラボレ-ション(協働)は大切で必須なことでしょう。
従業員とともに生き延びていくことは企業の社会的責任と思います。
上記のポスターにあった7つの条件を紹介します。
1.明るく、元気なあいさつができる。
2.言われなくても、自分で考え、行動できる。
3.人がイヤがることでも、進んで取り組める。
4.常に 「どうしたらできるか」 を考える。
5.仕事の期限を、きちんと守ることができる。
6.ミスやクレームなどの報告を、すぐにできる。
7.人が見ていなくても、手を抜かずに仕事ができる。
すべて「YES」の人は、自分で考えて仕事ができる理想的な「人財」でしょう。
前向きな仕事の人材としてはせめて「YES」が4コ以上でありたいと思いました。
健康経営という言葉は最近出てきたものですが、かつて日本にあった商道の考え方を含んでいるように思えます。
江戸時代中期の近江商人の商道に「三方よし」というのが有ります。
自分だけが儲ければよいという考えでは、商売は長続きしない。自分のことよりもお客のことを考え、みんなのことを大切にして商売をすべきという考え方です。
1.売り手よし
2.買い手よし
3.世間よし
これらは今でもりっぱに通用する企業経営の考え方であると私は思います。
互譲と融和の感じられる日本的と言える「企業の社会的責任」がにじみ出ていると思います。株主利益を重視し過ぎる欧米流の考え方よりは好ましく思います。
古来の日本的な良いものを現代の企業は忘れているのではと気がかりです。
私なりの現代風な「三方よし」のアレンジ(表現)を考えてみました。
今風の「三方よし」とは何だろうかと頭をひねってみると、次の3つになりました。
1.消費者よし
2.従業員よし
3.株主よし
株主利益ばかりが優先される現代の風潮には不安になります。株主も自分に利益をもたらしてくれる消費者や従業員との共生の考えがあると良いと思います。自分さえ儲かればよいというのは、企業の社会的責任の放棄に思えます。お互いを認め合う三方よしの企業にはなれないものでしょうか。
国の経営は法人税や所得税などの税収で成り立っています。企業が従業員を雇用し税金を納めることは国を支えることでもあります。企業が健全に生き延びていくことは社会的責任でもあると思います。企業が長く生き延びていくためには、従業員と経営層が力を合わせたコラボレーション(協働)が欠かせないのではないでしょうか。
企業の健康配慮義務と従業員の自己保健義務は、コラボレーションの一つだと思います。車の両輪とも言えます。
また、企業の人材育成努力と従業員の自己研鑽(成長努力)もコラボレーションだと思います。うまくかみ合ってほしいものです。
これからの時代の産業保健スタッフのミッション(使命)は、経営層と従業員による健康経営の健全なコラボレーション(協働)を生み出していくことではないかと考えています。このミッションを担当し産業保健スタッフをリードする経営層の重役もてほしいと思います。従業員と経営層が力を合わせて健康経営企業を目指してほしいと思います。
嘱託産業医が生意気なことをと思われたらご容赦ください。
老兵と言える年齢になりましたが、私も「人財」になるべく努力してまいります。