独立行政法人 労働者健康安全機構広島産業保健
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センター通信

産業保健相談員レター 2023年4月 ~受動喫煙症~

2023.04.03

 産業保健相談員(産業医学担当) 津谷 隆史

 先日、40才台の女性が外来受診されました。職場の席替えで同室者の呼気からのタバコ臭で頭痛、めまい、嘔気が出現するための診断書作成希望でした。この方は、初診のため症状病名で診断書を作成し、受動喫煙が原因の可能性は否定できない。とのコメントをいれました。現在、受動喫煙に悩まれておられる方は多いと思います。今回は、受動喫煙の被害そのものを受動喫煙症と診断する基準について整理しておきます。
 1回や2回、タバコの煙に遭遇して、不快な症状が起きたとしても、それだけでは診断は困難です。しかし、何回もタバコ煙に曝露され、同様の症状がおこれば急性再発性の受動喫煙症と診断が可能です。
 日本禁煙学会では、受動喫煙症の診断基準が記載されています。職場などで受動喫煙被害に遭われている方がおられれば参考にしていただければ幸いです。以下、ホームページからです。
 http://www.jstc.or.jp/modules/diagnosis/index.php?content_id=2「受動喫煙症の分類と診断基準」
 前提条件:
 非喫煙者であること。受動喫煙にはサードハンドスモーキング(注)を含む。受動喫煙はタバコ煙あるいはタバコ臭を嗅ぐことでおこる。電子タバコ・加熱式タバコなどの新型タバコによって起こる病態も、受動喫煙症に含まれる。また、もともと特定の疾患を有している患者が受動喫煙曝露によって症状増悪・再燃・再発した場合も、受動喫煙症に含まれる。
  注:サードハンドスモーキング=三次受動喫煙被害。喫煙してきた者の呼気や体・髪・服などからの悪臭や、喫煙・受動喫煙があった場所で壁や物に染みついたヤニ臭による被害。

 レベル1 無症候性急性 受動喫煙症
  診断:タバコ煙に急性暴露の病歴があるが症状はない。
  症状・疾患:なし。ただし,同居の人間はコチニンが高値の事がある。
 レベル2 無症候性慢性 受動喫煙症
  診断:タバコ煙に慢性的に曝露しているが症状はない。
  症状・疾患:なし。ただし,同居の人間はコチニンが高値の事がある。
 レベル3 急性(再発性)受動喫煙症
  診断:(1)症状の出現(増悪)が受動喫煙曝露開始(増大)後にはじまった。
     (2)疾患の症状が受動喫煙の停止(軽減)とともに消失(改善)し、受動喫煙がなければいつまでも無症状(安定)。
  症状・疾患:めまい、吐き気、倦怠感、流涙、結膜炎・鼻炎・咳・咽喉頭炎・気管支炎。発疹、頭痛、狭心症、心房細動、一過性脳虚血発作、体調不良、うつ症状など
 レベル4 慢性(再発性)受動喫煙症
  診断:急性受動喫煙症を繰り返しているうちに、受動喫煙曝露期間を超えて症状または疾患が持続するようになったもの。
  症状・疾患:タバコアレルギー、化学物質過敏症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、糖尿病、メタボリック症候群、心房細動、心筋梗塞、脳梗塞、COPD、自然気胸、肺結核、アルツハイマー病、小児の                           肺炎・中耳炎・副鼻腔炎、喘息、身体発育障害、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、乳幼児の食物アレルギー、肺炎など
 レベル5 重症受動喫煙症
  診断:急性・慢性受動喫煙症の経過中に、致死的な病態または重篤な後遺障害の合併に至ったもの。
  症状・疾患:悪性腫瘍(とくに肺がん、喉頭がん、副鼻腔がん、子宮頸がんなど)、乳幼児突然死症候群、くも膜下出血、脳梗塞、心筋梗塞、心臓突然死、 COPDなど