独立行政法人 労働者健康安全機構広島産業保健
総合支援センター


センター通信

産業保健相談員レター 2024年4月 ~骨粗鬆症予防への第一歩 -転倒災害予防のために~

2024.04.30

産業保健相談員(栄養指導担当) 吉中 由美子

 皆さんは、10月20日の世界骨粗鬆症デーをご存じですか?
 国際骨粗鬆症財団(IOF)と世界保健機関(WHO)が共同で、骨粗鬆症と骨代謝
障害の啓発を目的として1998年に制定しました。「世界中から骨粗鬆症による骨折を
なくす」ことを目標に、毎年、骨粗鬆症デーには世界規模でキャンペーンが展開され
ています。日本各地でもイベントが開催され、2023年には呉市で市民公開講座の開
催と大和ミュージアムのブルーライトアップが行われました。
 骨粗鬆症とは、骨量が減って骨が弱くなり軽微な外力でも骨折しやすくなる病気で
す。日常生活で自覚することは少なく、骨折して初めて骨粗鬆症とわかる方がほとん
どなのです。
 骨粗鬆症は特に閉経後の女性に多くみられるため、「骨粗鬆症による骨折」と聞く
と、高齢女性が転倒して骨折するイメージが強く、自分事として捉えにくいかもしれ
ません。
 しかし、骨粗鬆症は働く世代にとっても、大変重要な課題となっています。
 令和3年転倒災害発生状況によると、転倒による骨折等の労働災害は年々増加を続
けており、発生件数のうち50代以上女性が47%、50代以上男性が25%を占めてい
ます。高齢になるほど転倒しやすく、骨が弱くなるほど骨折しやすくなります。低体
重や過度なダイエットも骨粗鬆症のリスクになります。転倒による骨折等の労働災害
を防ぐには、転倒予防だけではなく、骨粗鬆症予防と骨粗鬆症の早期発見も大切です。
 骨粗鬆症予防には、バランスのよい食事で適正体重を維持することが基本です。そ
して骨の健康のための栄養素として、カルシウム・ビタミンD・ビタミンKが不可欠
ですが、ビタミンB6、B12、葉酸などの摂取も必要です。カルシウムは日中より夕方
以降に吸収効率が高まるため、夕食で乳製品などカルシウムの多い食品を摂ることも
お勧めします。
 骨粗鬆症の早期発見のためには、骨粗鬆症検診が重要です。日本では骨粗鬆症の有
病者数は1,590万人と推定されており、若い人でも発症のリスクがあります。
 健康増進法により、各自治体で40~70歳の女性に5歳刻みで実施されていますが、
受診率は全国平均5.3%(2021年)と低いことが課題です。4月1日からスタートし
た「健康日本21(第三次)」では、生活習慣病の発症予防・重症化予防として、新た
に「骨粗鬆症検診受診率15%」の目標が掲げられています。人間ドックのオプション
や医療機関で受けることもできますので、骨粗鬆症予防の第一歩として、ぜひチェッ
クしてみてください。