センター通信
産業保健相談員レター 2024年5月 ~依存症 最近の話題~
2024.05.09
産業保健相談員(産業医学) 加賀谷 有行
皆さん、新年度になって心機一転して仕事に励んでおられるでしょうか。今年の3月から海の向こうのスポーツ界で巻き起こったギャンブルの話題は記憶に新しいことでしょう。 (スポーツ界で話題になったギャンブル依存症|医療・健康コラム|ファミリードクター)
今回は、依存症に関する最近の話題を紹介します。
① 2024年3月に広島県依存症対策推進計画が策定されました。
広島県はアルコール健康障害対策及びギャンブル等依存症対策を一体的な依存症対策として計画的に推進するため、広島県依存症対策推進計画を策定しました。
他県ではアルコールとギャンブルについて別々の計画を策定している場合が多いですが、広島県はアルコールとギャンブルの対策を一体化させて依存症対策としているところが特徴です。
また、第8次保健医療対策(2024年3月策定)と歩調を合わせて広島県依存症対策推進計画がスタートすることも特徴です。進行予防(2次予防)について、広島県ではすでにアルコール健康障害サポート医という資格を創設しており全国的にも注目されていますので、この養成研修は継続します。
また、新たに精神科医等を対象としたギャンブル等依存症専門医(仮称)の養成が施策として記載されています。再発予防(3次予防)に関する対策としては職域における復職・就労継続支援が記載されています。依存症などの精神疾患に関しても治療と仕事の両立支援が今後重要になると予想されます。
➁ 2024年2月に厚労省から、健康に配慮した飲酒に関するガイドラインが公表されました。
厚生労働省は、国民一人ひとりがアルコールに関連する問題への関心と理解を深め不適切な飲酒を減らすために本ガイドラインを作成しました。
健康に配慮した飲酒方法等についての記載があり、具体的には、自らの飲酒状況を把握する、飲む前に飲酒量を決めておく、飲酒前または飲酒中に食事を摂る、飲酒の合間に水分補給する、休肝日をつくる等を推奨しています。また、飲酒量と疾患の発症リスクについても一覧表を作成しており、高血圧や食道がんは少量の飲酒でもリスクが増えること、大腸がんや脳出血は20g/日以上でリスクが増えることが記載されています。
➂ 2024年4月にアルコール健康障害に係る地域医療連携等の効果検証および関係者連携会議の実態調査に関する研究が公表されました。
健康診断および保健指導におけるアルコール健康障害への早期介入に関するガイドライン、医療機関でのアルコール健康障害への早期介入と専門医療機関との円滑な連携に関するガイドライン、地域におけるアルコール関連問題への対応と医療との円滑な連携に関するガイドラインから成ります。
本ガイドラインでは特定検診の結果を用いた介入方法や一般臨床医から依存症専門医への紹介の方法等について記載されています。全国各地の医療連携に関する好事例が報告されており、広島県の取り組みも紹介されています。
ご一読ください。