独立行政法人 労働者健康安全機構広島産業保健
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センター通信

産業保健相談員レター 2024年7月 ~「がん検診、受けていますか?」 ~

2024.07.01

  中国労災病院治療就労両立支援センター 保健師 庄垣内 梓

 私は、業務で人間ドックを受診された方の生活指導を担当しています。より良い健康に向けた生活上の助言の他、精密検査が必要な方には紹介状をお渡しし、受診の必要性や検査についてお話しします。後に、「早期のがんでした。早くみつかって良かったです。」という報告を聞く一方で、数年ぶりにがん検診を受けて進行がんがみつかった方もおられます。定期的ながん検診の必要性を痛感します。皆さんはがん検診を受けておられますか?
 昭和56年から日本人の死因の第1位はがんです。国はがん対策を進めてきましたが、今も約3人に1人ががんで亡くなり、約2人に1人ががんにかかるといわれています。平成18年に制定された「がん対策基本法」では、国、地方公共団体、医療保険者、国民、事業主などの責務が示されており、がん対策は国全体で取り組むものとされています。市町村が健康増進法に基づくがん検診を実施している他、医療機関や健診機関、職域などでもがん検診が行われていますが、受診率は諸外国より低く、受診率60%以上を目指しているところです。がん検診は、『対策型検診』と『任意型検診』に大別され、前者は対象集団の死亡率の減少を目的とし、有効性が確立した検査方法で実施されます。「胃がん検診」、「大腸がん検診」、「肺がん検診」、「乳がん検診」、「子宮頸がん検診」の5種類において、先に述べた市町村で主に行われています。後者は個人の死亡リスクの減少を目的に、医療機関や健診機関などが任意で提供しています。個人の目的や好みで選べますが、有効性の確立していない検査方法が含まれる場合もあります。
 国民生活基礎調査によると、がん検診を受けた者の約30~60%が職域におけるがん検診です。職域におけるがん検診には、法的な位置づけはなく、保険者や事業者が福利厚生として実施しているため、検査の項目や方法など様々なのが現状です。がん患者の約30%は働く世代であり、「女性の社会進出」と「定年の延長」により、働くがん患者は増えると予測されています。職域でのがん検診を含めたがん対策は重要です。職域でのがん対策については、厚労省の「職域におけるがん検診に関するマニュアル」や、がん対策推進企業アクションのホームページをご参照ください。
 最後に、がん検診の目的は、早期発見・早期治療、死亡率を低下させることです。残念ながら検査の精度は100%ではありません。よって、定期的な受診でがんの発見や死亡の回避に繋げることが重要です。また、結果が「要精密検査」の場合は、主治医や専門の医療機関に相談しましょう。がん検診は自覚症状がない時点で受けるため、症状が出た頃には、がんが進行している可能性もあります。がん検診を定期的に受け、結果を確認し、明日の健康に繋げましょう。