センター通信
産業保健相談員レター 2024年8月 ~「障害者雇用で働く人たち」 ~
2024.07.31
西条心療クリニック 精神科専門医 山崎 正数
メンタルの障害者も社会参加することで一層の安定を得られている。社会参加のひとつが就労である。メンタルの障害者が支援を受けながら働く場は就労継続支援B型、同A型、障害者雇用がある。当然一般雇用で就労している人も多数いる。支援制度が確立したことで企業が参入し就労継続支援事業を展開していることは好ましいが、補助金頼みの展開をしたために破綻している例も散見され、物言わぬ利用者に多大な失望を与えていることも事実である。
Aさんは施設の朝食づくりを続けている。朝早くから1人で働いている。確かに働く時間は短いものの休むことなく勤務している。Aさんは施設の入所者から「ごちそうさま」と言われるのが何よりも励みになると言っている。Aさんは運転免許を持っていない。そのため日々送迎をするご家族の努力にも感謝である。
Bさんは高度の学問を修得した人だが、就活が上手く行かず自信をなくし、スーパーでのアルバイトやパートタイマーで細々と生活費を得ていた。何年かし一念発起、一流企業の障害者雇用に応募し採用された。その会社は障害者も障害のない人と大きな区別なくその人の能力に応じた仕事が割り振られる。水を得た魚のようにBさんは能力を発揮し今や会社の重要な仕事の一部を日々こなしており、一層明るい表情で受診している。
Cさんは以前は猛烈社員だったが過重労働が要因でメンタルに支障を来し休職後仕事に復帰したが、頭が働かない状態では迷惑をかけると退職。その後は自宅で目標を見いだせない生活を送っていたが家族の勧めで就労継続支援B型で復帰、これまでしたこともない重労働の仕事もこなし、加えてその職場で作業マニュアルを作成したりした。その後職場を変え障害者雇用で就業しているが、受診のたびに働き過ぎと能力を発揮しすぎないようお願いしている。
Dさんは職場の配慮で短時間の就労を続けられているが、まさにその短時間の就労がDさんに社会参加している安心感を与え安定した状態が続いている。
働きたくてもなかなか就労出来ない人もいる。 Eさんは能力はありこれまでも何社かで就労はしたが、人間関係が上手く行かず就労が続いていない。障害者雇用を希望しているが人間関係が不安でなかなか踏み出せていない。リモートでの就労があれば良いのにと話をしている。日々の診療で気になることがある。以前は不調な人に休養を勧めることに苦心していたが、最近は治療よりも休養の診断書が目的で受診したのではないかと思われる労働者が多いような印象を受ける。