センター通信
産業保健相談員レター 2024年10月 ~「来年に向けて熱中症対策を進めていきましょう」~
2024.09.25
産業保健相談員(産業医学担当)吉永光一郎
今年の夏はとても暑かったですね。今年の8月の平均気温は2000年と比べると約2℃上昇しています。もっと分かりやすい指標として熱中症警戒アラートの発令日数があります。熱中症警戒アラートの発令日数は、2021年〔21日〕→2022年〔26日〕→2023年〔30日〕と年々増加していました。2024年は途中経過となりますが、9/18時点で、46日という値となりました。また、8月の熱中症警戒アラートの発令日数は25日(81%)でした。来年以降がどうなるかはわかりませんが、たまたま今年が暑かったと考えることも難しいかと思います。
労働の現場は、①筋肉を動かすことで体が発熱する②日光や高温となる設備があり輻射熱が発生する③作業服、保護具の着用が必要で熱がこもる等の理由で人間の体温維持には不利な環境です。
厳しい暑熱環境にさらされる業種では、暑熱環境が悪化するリスクを考慮してハード、ソフトでの対策を検討していくことをお勧めします。とはいっても、暑熱環境を根本的に解決するような無人化や職場全体の空調管理は大掛かりな投資が必要となりますので、現実的にはなかなか難しいと思います。当面は、大型ファン、スポットクーラーによる局所的な改善や、WBGT測定機器の準備、クールスポット(涼しい休憩場所)の設置等を優先することになるでしょう。このような改善活動も、それなりのコストがかかりますので、来年に向けて検討を開始する必要があります。また、他にも(1)水分塩分摂取方法の改善(ウォーターサーバ―や保冷庫の準備、スポーツドリンクや塩飴・塩タブレット等の配布方法)(2)熱中症予防教育の改善(資料見直し、教育方法等)(3)業務開始時・業務中の体調確認方法の改善(4)WBGT値に応じた休憩時間のルール化(5)体調不良時の対応フローの改善などやるべき対策はいろいろと考えられます。
熱中症に関する資料は環境省(熱中症予防情報サイト)と厚生労働省(熱中症予防のための情報・資料サイト)から出されています。職場に関するものは、厚生労働省「職場における熱中症予防情報」にまとめられています。参考にしてください。
熱中症の発生をゼロにすることは難しいかもしれませんが、熱中症が原因で後遺症を残すことや、死亡事例が起こるようなことは何としても防いでいかなければなりません。
職場における熱中症対策は毎年改善していると思いますが、暑熱環境が年々悪化していくことも考慮して、継続的に熱中症対策を行っていきましょう。